スタジアム建設費を全額負担
名声では測れないジュリの人間性
一年前の猛暑のフランス革命記念日、7月14日。午前11時を少し回ったその時、リヨン郊外の市民スタジアムに集まった子どもたちが一斉に歓声を挙げた。その先には、当時バルセロナに所属していたリュドヴィク・ジュリ(32)の姿があった。
彼の育成クラブであるMDA Foot(モンドール・アゼルグ・フット)のホームスタジアムはこの日、「リュドヴィク・ジュリ・スタジアム」として落成式を迎えた。多目的スポーツ施設の工費は、ほとんどがジュリのポケットマネーだ。その懐の深さは、そのまま彼の人間性を表現している。
「お金や名声は問題じゃなくて、ここに来る子どもたちが幸せな気持ちになって、プロ選手の夢を抱くことが重要なんだ。これからもどんどん“カツアゲ”してくれ!」
観衆がどっと笑う。心に残るスピーチで魅了する。「名声は問題じゃない」という言葉に嘘はない。招待客のほとんどはボランティアなどのクラブ関係者。メディアは招待されていなかった。
その3日後のASローマ移籍から、さらに1年半が経過した。出場機会を求めてこの夏に移籍したPSGでは、11節、12節で2連敗に期し、順位も6位から11位に転落。これを受けた第13節前日の11月9日、ジュリは「パリジャン」紙のインタビューで、「敗戦のたびに言い訳をして、早々と敗戦を受け入れるのはおかしい」と、チームメイトたちを一喝した。 が、今季無得点のジュリ。「そういうお前が決めろ」という批判が噴出したのは、当然の成り行きだった。しかし翌日の対リール戦(1-0)で決勝点を決めたジュリは、あっという間に批判の声を黙らせた。名声はいらない、言い訳をしない、結果で示す。彼らしいエピソードに、思わず笑みがこぼれた。